KIA きあ

MAR 10,2005 2:お姉様と呼ばないで。
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 春の風に吹かれ、チェック柄のスカートが舞い上がった。
 東洋系の顔立ちをした長身の娘は、それとなく服を押さえた。
 運動部らしく良く引き締まった体をしている。
 白いセーラーの半袖から覗かせる右腕には、サポーターをつけその下に包帯が巻かれていた。
 風で散らされた黒髪を耳にかけながら、”彼”は振り向いた。
「ななっ。今の仕草イケない?」
 ロンのスカートの中を見てしまったキアは、気分が悪そうだ。
「はぁ…」
 アレを二週間も見つづけると思うと、ため息が零れた。

 エルセス女学院での潜入調査訓練。
 内容は転校生として学校に潜入し、生徒の素行調査を行うこと。
 男だとバレたらそこでおしまい。任務失敗、訓練不足扱いで特別カリキュラムが待ってる。
 加えて生徒同士の取り決めで、任務に失敗したチームには罰ゲームを用意することになった。

 成功しても、失敗しても何だか釈然としない。
 何より、ロンが妙にやる気があるのが……。
「そのため息はなにかしら? 転校生は第一印象が大切よ。さ、笑顔笑顔」
 口の横に手をあてて、可憐(?)な仕草をするロン。
 キアは、相方に変な癖が残ったらどうしよう、と心配した。
「でも、僕は良いとして、ユカは授業についていけるの?」
 そうやってキアは、年上の相方に偽名で聞いた。
 キアの方は、元々三年飛び級しているだけに、こと勉強に置いては心配はいらない。
「教科書なら昨日開いてみた」
 ロンは肩をすくめて、言った。
「これがさーーっぱり。ま、たかだか二週間やそこら、何とか誤魔化すさ」
 ロンは実技を見込まれて外部からスカウトされた。
 包帯で隠した右腕にはとてもカタギでは通らない刺青がある。外に居た頃に彫ったものだ。
 文字こそ読み書きできるものの、義務教育そのものは受けていない。
 スカウト以降は言語を優先に勉強していた…というより、戦闘訓練をしながらでは言語系だけで精一杯だった。
「しかし、女子高ならフリーの女の子も結構いるよなぁ、キア」
「…あのねぇ。この格好でナンパできると思ってんの?」
 キアは自分のスカートをつまんで見せた。
「いくら俺だって任務中にナンパはしねぇよ。見て楽しむだけだって」
 ……何を見るつもりだ?

 長話をする凸凹コンビに、いつしか人の視線が集まっていた。
 これから潜入するエルセス女学院の生徒の姿も混じっている。
「ほ、ほほほほほ」
 ロンはキアの腕を掴むと、学園に向かった。


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 エルセス女学院は中等部と高等部が一つになった学園で、生徒数は中・高合せて千と二百数名。
 一階の渡り廊下を女生徒たちが、おしゃべりをしながら歩いていた。
 メガネをかけた少女が一人、大量のノートを抱えてふらふらと歩いていた。
 ボブカットの黒髪が歩調に合せて揺れる。
「手伝うよ。職員室?」
 ふいに後ろから声がかかったと思うと、大きい手がノートの束を半分以上持ち去った。
 少女が横を見ると顔のある位置には襟元が見える。
 首を上げると、長身の女性が立っていた。
「あ、すみません。あの……」
 誰だろう?、とメガネの少女は思った。
 チェックのスカートは高等部の証だけど、こんな人いただろうか。
「二年生?」
「あ、はいっ。あの……」
「ユカ。今日、二−Gに転校してきたんだ。クラスは違うけど、よろしく」
 そう言ってロンはにこっと笑った。
「名前、聞いてもいい?」
 メガネの少女は、ミウと名乗った。


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 階段の窓からキアは空を見上げた。
 みれば、渡り廊下でロンがさっそく女子に声をかけている。
 颯爽(さっそう)と歩く姿が……大変男らしい。
「…後で言っとこ」
 何が悲しくて、男に女らしくしろと言わないといけないのか。
 沈痛な面持でキアは呟いた。
「おーい。キア」
 頭の上から声をかけられた。
 赤毛のショートカット、長身の女子が階段の上から手を振っていた。
 同じクラスのカナだ。
 その彼女の服装を見て、キアは固まった。
 着れないっ。スカートは履いても、あれだけは着れない。
 ブルマなんて。
「次、体育なんだけど、服は…持ってきてないよね。
 任せときな、今から他のクラスの子に借りてくるから、一緒においで」
 キアの表情を”不安そうに落ち込んでいる”のとかん違いしたのか、
 カナは励ますように言った。
「借りっ!? え、いい。いらない。体育嫌いだし」
 キアは慌てて手を振った。
「遠慮するなって、困ったときは助け合い。えーと、他に今日体育のあるクラスは…」
 いかんせんカナは大きい。
 キアは腕をつかまれ、嫌々連行された。

 丁度、キアの目の前にカナの胸が見える。
 男にはこんなものはない。
 身体は大きくても、やっぱり女の子だなぁ…指も細いし。
 気恥ずかしくなって、キアは顔をそらした。
 カナが口を開く、
「ねぇ、誰かこの子に体操服貸してくんない?」
 しまったっ、何時の間に、とキアは教室の前で焦った。
「あ、いいよーっ」
 よくないっ。
 そう、叫びたくなるのを、キアはぐっと堪えた。
 こうなったら、”仮病”しかない。
 そう腹をくくったキアの腕に、服が渡される。
「はい。下、Tシャツ着てるんなら、その上から羽織ればいいから」
 それは赤い……。

 ……ジャージ?

「本当は私の貸しても良かったんだけどさ。ほら、私のだと大きすぎるから」
「あ、あははは。そっか、うん。ありがとう」
 はぁ。二週間、長いなぁ……。


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絵:[キア&ユカ]

麗子さんから頂きましたw
[主人公ズ/きゃーv][女子生徒/ミウ/カナ]


女子高生キャラデザ&ネタ提供、紅子様、おねゆ様、麗子様。多謝。
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3:バレちゃった。





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